22歳の男の濁った目

汚れた目から世界を見てます。

漕げメロス。

俺は激怒していない。


今日も素晴らしい一日だった。



邪悪に対して人一倍敏感でもなければ、

王の暴政に激怒もしていないが

俺は旅立たなければならない。


俺の場合セリヌンティウスはいない。

セリヌンティウスとは俺自信なのだ。

自分が自分を信じてやれずに

いかに他人に信じてもらえようか。


ともかく俺はメロスと同じく

この初夏、満点の星空のもと

走り出すのだ。


妹の結婚式ではなく

神戸のランチクルージングに、

関空バンコク行きの航空機に、


間に合わなければ信頼も金も失うのだ。


ただ、メロスと異なるのは自転車に乗る点で

それは今のシラクサからの距離に換算して

およそ40kmだったと言われる

メロスの旅路に比べ

俺のそれが600kmだから仕方がない。


なおかつ3日後の日没ではなく3日後の昼前には着いていなければならない。

俺も人並みに神戸の船旅を楽しみたいから

四時間は寝たい。

それを鑑みるとかけれてせいぜい40時間だ。



昔、太平洋戦争で銀輪部隊というのが存在した。

南方作戦において、陸上歩兵戦力を高速移動させるために考案された自転車で移動する部隊だ。


昔の日本兵、特に下士官の気力は凄まじいものだったので勇気欲しさに調べると

走破距離はフル武装で一日に100kmだった。


私はフル武装ではない。

鉄帽も小銃も持っていないが

背中にはバンコク行きの荷物を背負っている

そんな最中で一日に350kmは可能なのだろうか。


ともかく眠らずに漕ぎ続けるしかない。

それではまた。